Ep.224
四日市近代イノベーションの発火点、旧・四郷村(Ep.213参照)。
誇り高き四郷(よごう)地区では、同地の歴史や郷土の偉人を顕彰する施設がある。
「四郷郷土資料館」である。
24年3月にリニューアルオープンした。
まず外観に目が行く。ここは旧四郷村役場だった。
明治時代以降、欧米の技術を用いた役場が全国各地にできたとのことだが、現存しているのは珍しいようだ。
館内では偉人たちの紹介から始まる。
「新しいことに積極的に取り組む四郷の人々」
新進気鋭な気質だったようだ。
中でも代表的なのが伊藤小左衛門(5世。1819-1879)と伊藤伝七(10世。1852-1924)である。
伊藤小左衛門は開校した横浜を訪れた折、生糸と茶が人気であることを知り、富岡製糸場を視察して器機製糸工場を設立した。
四郷を生糸と茶の一大産地とさせた、同地発展の始祖である。(これが四日市あすなろう鉄道の前身ができた理由でもある)
伊藤伝七は渋沢栄一の援助を受けて紡績機器で三重紡績会社を設立。これは後に東洋紡績株式会社となり「東洋一の紡績工場」と称されるようになった。現在の東洋紡(株)である。
明治から大正にかけて、四日市や三重県は紡績所や製糸場で溢れていたようだ。時代の勢いを感じる。
紡績とは、綿や羊毛などを長い糸にする作業。製糸(せいし)とは、蚕の繭から糸を引き出して太い糸にすること。
なお、現在の四日市市では、東洋紡の痕跡はわずかに見ることができる。
楠(Ep.174、218参照)には工場があるし、関連会社として御幸毛織(株)が中川原に、東洋紡ロジスティクス(株)が塩浜に、それぞれ工場がある。
そして「富田工場原綿倉庫」が富州原に。イオンモール四日市北(Ep.8参照)の敷地内である。(同ショッピングモール自体が工場跡地)
建物は国の有形文化財であり、中にはカフェが入っている(横浜の赤レンガ倉庫みたいだ!)。
そもそも、この四郷地区はとりたてて何の取り柄もない土地だ。
だからこそ先人たちの偉業が光る。
実は同資料館がリニューアルする前の2020年にも訪れたことがあった。
このときは昔の農作業用具の展示がメインだった。
私はこの手の郷土資料館をよく訪れる(Ep.94など参照)。そしてこれは不思議なのだが、それらはだいたい昔の生活の道具や用具が展示されている。特別、地域の特色を反映しているわけではないと思うのが..
だからリニューアルされた四郷郷土資料館が「この地の偉人と歴史」にフォーカスしたのは大きな変化であり、それだけ語るべき(誇るべき)物語が充実していることを意味する。
しかも説明員の方が3人も常駐するというのは、破格の贅沢度!?
四郷郷土資料館。
この土地が生んだ偉大なる先人たちの活躍を学ぶことができる場だった。
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四郷 Yogo Folk Museum
Ep.224
四郷 Yogo Folk Museum reopened in March 2024. This former village hall which is made as “Art Deco style” tells us history, great persons and lifestyle in old days.
https://www.city.yokkaichi.lg.jp/www/contents/1001000002609/index.html