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美しき県庁所在地・津 東洋軒「ブラックカレー」編

Ep.214

三重県の“県都”、津市には老舗洋食店が多い。

 

「東洋軒」(津市丸之内。1928年創業)

「中津軒」(津市中央。1911年創業)

「入栄軒」(津市大門。1919年創業)

は“津の洋食三軒”と称される。

中でも筆頭格が「東洋軒」である。

 

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東洋軒本店 津市

 

東洋軒の歴史は三重県を代表する企業人・文化人であった川喜田久太夫(1878-1963。別名を川喜田半泥子)が、百五銀行Ep.37参照)の頭取に就任したことに始まる。

県下一の銀行へ成長させた川喜田が全国から訪れる金融関係者に「津市の文化度を誇示」すべく、「東京東洋軒」の支店を誘致したのだという。

(大川吉宗氏(三重調理専門学校学園長)より。「NAGI 23年春号」)

 

「東京東洋軒」とは、当時東京の三田にあった西洋料理屋で1889年に創業。「精養軒」(上野。1872年創業)と並ぶ名声を得ていた。

 

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東洋軒 HPより

 

東京で136年、津で96年の歴史を誇ることになる。

現在では津が「本店」となっているが、東京赤坂に「西洋御料理 東洋軒」(2014年開業)や東京駅構内に「東京ステーション」店がある。

東京では「松阪牛やアワビなど、三重県が誇る食材をふんだんに使っている」とのことだ。(猪俣憲一料理長(津東洋軒3代目、兼東京東洋軒8代目)より。「NAGI 23年春号」)

 

津の本店よりもラグジュアリーな食材を用いた高価格帯のメニューを揃える、さすがである。

 

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東洋軒本店 津市

 

津の本店はしかし入店に敷居の高さを感じるものではない。ふらっとランチに訪れて程なくして席につくことができる。

 

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カニクリームコロッケ

 

格調高い店内でクラシックな洋食を楽しめる東洋軒だが、最大にして最高の看板メニューこそ「ブラックカレー」である。

この一品こそ、同店の名声を高める一因となっている。

 

ブラックカレーとは、野菜や肉を長時間・長期間煮込み、“見た目が真っ黒になったカレーライス“のことだ。

 

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テイクアウト

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先述の猪俣料理長によると

上質な松阪牛脂と小麦粉、秘伝のスパイスを焙煎し、完成までひと月かかるルウからにじみ出る味は、まっころな見た目に反して甘みや旨みがふくよか。あとからスパイスの刺激が鼻腔を抜けていく

とのことだ。

 

このヴィジュアルに食欲をそそられるかは人に依るだろうが、味はとても美味しい。ビーフのサイズを食感が贅沢さを感じさせる。

ただし味は圧倒的に濃厚である。濃度が高い。濃縮されすぎているのだ。

市販のルーでカレーライスを作るとき、この濃さだったら私は水を足して3倍に希釈するだろう。

 

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レトルト

 

そういえば「元祖ハヤシライス」も食べたことがあった。銀座の「煉瓦亭」である。これも見た目は黒く、濃厚だった。

”クラシックスタイル”のカレーライスやハヤシライスは、みなこのような見た目と味の濃さになるものなのだろうか?

 

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「煉瓦亭」のハヤシライス 牛肉が食べ応えあり贅沢。たまねぎはシャキシャキ。こちらも3倍希釈可能

 

東洋軒のブラックカレーは今でも、津の本店で、他の全支店の分も含め仕込んでいるという!?

 

秘伝のスパイスとか門外不出のレシピとか、今の時代に何言ってんだよ。と言いたいところだが(現在の料理界は業界や料理人全体で切磋琢磨し、発展していこうという流れである。Ep.9参照)、エッセンスやキモとなる部分を他者に任せられないから自分でやる、それ以上に安心安全の担保は自分でしかできない、という意図は納得できる。

 

それにしてもなぜブラックになるのか?

長時間煮込むとそうなるようだがいまいち釈然としない。

実際に確かめてみよう。

 

 

<ブラックカレー調理への挑戦>

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5分

 

たまねぎをみじん切りにした後炒める。アメ色になるまで炒める。

私は“カレースター”水野仁輔氏の『スパイスカレー事典』を愛読したので、この作業はいつものことである。

 

5分、10分、15分…

水分が蒸発して身がどんどん萎んでいく。

あぁ、それにしてもたまねぎとはなんて水ばかりの食材であろうか。丸2個も投入したのに、これっぽっちの量にしかならない。

 

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10 分

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15分

 

「アメ色と焦げのギリギリ境のところ」(というよりももう焦げてる?!)で炒めるのを終了。

他の野菜と肉とスパイスを投入して水を足して煮込む。

もちろんカレールーは使用しない。

 

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しかしながら煮込んでいるときから

「これは到底ブラックにはならないな」

と感じたら、実際にその通りとなった。

 

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ブラックカレー1回目 → 失敗

 

後になって気付いたがそもそも小麦粉を入れていなかった。

ブラックカレーのブラックとは、小麦を炒めたときに茶色となる、あの色味こそが寄与しているのではないか?

 

それともう一つ、ターメリックを入れ過ぎたように思えた。

説明するまでもなく、ジャパニーズカレーの黄色とは、ターメリック(ウコン)による黄色である。

 

反省を活かして後日、2回目にチャレンジ。

 

 

<ブラックカレー調理への挑戦 2回目>

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小麦粉を茶色になるまで炒める。別の鍋ではみじん切りたまねぎをアメ色になるまで。

両者を混ぜた後、カルダモン、コリアンダーターメリック(少量)、クミン、レッドペッパー。

 

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結果、黒くならず…

 

うーんこれはどうしたことか。

小麦とターメリックはケアした。

赤ワインでも入れるべきなのか?

いやこれをしてしまったらもはやカレーではなくビーフシチューになってしまう。

煮込み時間が圧倒的な足らないのか?

いやでもこれ以上長くしても黒くなっていく感じはしない。

 

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ブラックカレー2回目 → 失敗。ただし味としては美味しい。素材の甘みを感じた。たまねぎ大量投入が効いている

 

結局、黒いカレーの完成には至らず。

東洋軒「ブラックカレー」

なんて難易度の高い料理だろう。

そこには老舗洋食店の至高の技術が秘められていた。

 

 

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津 Tsu, How beautiful this city is!  “The Black Curry Rice” by Toyoken

Ep.214

“The Black Curry Rice” is a special cuisine of classic yoshoku restaurant, Toyoken(since1928).

This black color is brought by longtime/period sauting with ingredients.  But anything else??  Therefore, I tried cooking this one.

 

Sauting onion to amber color, wheat to brown color and also less using turmeric(yellow pigment), I took care of such procedure.  But NOT become so black one!

The Black Curry Rice, this might be hidden the secret legendary method.

 

https://touyouken.co.jp/sp/history.html

https://tokyo-toyoken.com/aboutus.html

https://touyouken.co.jp/sp/blackcurry.html

https://usagism2000.theshop.jp/items/71917354

 

 


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