ゴジラ、三重県に現る

Ep.237

小学生のとき、クラスメイトの男の子の一人がゴジラに熱中していたことがあった。彼はゴジラの図鑑のようなものを学校へ持って来ていて毎日研究していた。

虫眼鏡を片手に「ゴジラの口の中に何かが見える」と言っていたのを憶えている。

スーツアクターの何かが見えたのだろうか？ と正直に言うと私は冷静に見ていたが、同時に入念に観察したならば何か気付くこともあるのだと素直に感心した。

ゴジラ映画は、私の世代（小学6年生が1997年）にとってはやっぱり「ゴジラvsデストロイア」(第22作、1995年)が最も印象的である。

”ゴジラ死す”と銘打たれた衝撃的なコピー、身体に異常をきたした（メルトダウン寸前の）ゴジラのビジュアル、シリーズ第一作の結末（オキシジェンデストロイヤーによる破壊）に起因する史上最大・最強の敵「デストロイア」。

今回が最後のゴジラ映画なんだろうな

と、宣伝を見ただけで、子どもながらに思ったものだった。

デストロイアはいわゆる「平成ゴジラシリーズ」を締めくくる最後の作品。

この作品は、製作者側として確かに“一区切りつける”位置付けだったようだが、興行収入の点で大ヒット。早くも4年後に新作（いわゆる「ミレニアムシリーズ」のスタート）が作られるという後日談があった。

私は特別なゴジラファンというわけではないと思うが、2004年の「ゴジラFINAL WARS」から2019年の「ゴジラキング・オブ・モンスターズ」に至るまで、日米合わせて4作連続で映画館で鑑賞していたことに今回気付いた。

なぜわざわざ劇場まで？ と自問しても腹落ちする答えは出てこないが、ゴジラがどこの街に現れ、どのように暴れ廻るのか（ぶっ壊すのか）、への関心と爽快感を期待してのことだと思う。

「初代ゴジラ」から「ゴジラ−1.0」(2023年)まで日米通算で全34作。

私は劇場で観たものもあれば後にTV放送で、DVD・配信で観たものもあるが、シリーズの歴史を総じると”かいつまんで”しか観ていない。

そんな折、友人と会話してたまたまゴジラの話題が出たとき、ふと思い立った。

ゴジラ映画を全作鑑賞することを。

そんな訳で、第1作から通しで、かつ（できる限り）集中して観るという途方もない活動が始まり、半年間で完了した。全34作である。

今回は、この中でも「ゴジラと三重県」という観点に着目し、三重が登場する作品について記してみたい。

結果、過去に2度ほど、三重県はゴジラに襲撃されていた！

＜三重県が登場するゴジラ映画①：第4作「モスラ対ゴジラ」(1964年)＞

三重県が最初に登場するのは1964年公開の本作。時代を考慮すると高度経済成長による公害問題（Ep.21、119等参照）真っ只中である。

序盤から人間ドラマとモスラの描写が饒舌で退屈だが30分過ぎにようやくゴジラ登場。すると劇中で「名古屋、四日市方面に進んでいる」とのアナウンスあり。

34分頃から四日市（と思われる）の化学プラントをゴジラが破壊する。

破壊対象として城やビル、というのはこれまでの定番だったが工場は今作が初めてだ。

ひと通り暴れた後、劇中で次の場面は「名古屋のテレビ塔」。

物理的な距離と時間の整合性がとれないが、四日市から北東方向へ（海岸線に沿って）40km行くと名古屋だから、まあ許容内か。

四日市のシーンに着目すると、化学プラントを破壊している一方で背景や周囲の景色に目を凝らしたが、具体的にここ、と特定できる実在の場所に私は心当たりがなかった。要は石油化学コンビナートで暴れさせたかったのだろうと思う。

＜三重県が登場するゴジラ映画②：第20作「ゴジラvsメカゴジラ」(1993年)＞

約30年ぶりにゴジラが三重県に現れる本作は、対ゴジラのために人類がメカゴジラを造って戦う、というものである。

29分にゴジラが四日市に上陸、コンビナートを破壊。警察署長のような人物が電話を受け「何？ゴジラが四日市に？」というセリフでそれが確認される。

その後の場面で、ゴジラは鈴鹿サーキットを破壊。

さらにその後の場面では、驚くべきことにゴジラは京都(!?)におり、京都タワーを破壊。

いや、さすがに京都は待ってほしい。ゴジラの進行ルートとはどうなっているのか？

三重県北勢地方の地理に詳しい人間ならば下記の通りと推測するに違いない。

[ゴジラの推定ルート]

伊勢湾から上陸して海沿いの四日市コンビナートを破壊

→ さらに南西方向に進んで鈴鹿サーキットに到達、破壊

→ さらに西進。（仮に道を進むならば）国道1号線を進んで、あるいは「道」を通らずともとにかく西に進みやがて立ちはだかる鈴鹿山脈を越えて、滋賀県の南側を横切って京都中心部へ

といったところか。

四日市→鈴鹿は理解できる。しかし鈴鹿→京都というのは物理的・時間的に飛躍している。

両市は直線距離だと約90kmだから、ゴジラの移動速度（歩行速度）を仮に10km/hとすると9時間かかる。

“国内観光地の代表”である京都で、ゴジラを暴れさせたかったというのは分かるが、鈴鹿から向かわせるという意味ではやや強引だろう。

[ゴジラの破壊シーンから場所の特定にチャレンジ in 四日市]

本作が先の作品と異なる点、そしてそれがゆえに私が感心したことは、四日市も鈴鹿も、実在する場所の特定が可能なように見える点であった。

私は四日市在住。地の利をいかして、場所の特定にチャレンジしてみよう！

四日市コンビナートでの破壊シーンに着目すると、画面手前に川が見える。この景観は、心当たりがある。

この川は鈴鹿川ではないか？

すると場所は四日市第1コンビナートがある塩浜地区、つまり現在の三菱ケミカル(株)のプラントが破壊されているのだと分かる。

カメラのアングルはどうか？ ゴジラは川を手前にして陸の方面に歩いているからつまりは西に向かって進んでいる。

だから鈴鹿川を挟んで対岸西寄りから撮っている。

当該カメラアングルとはやや異なるが、三菱ケミカルの工場の対岸には吉崎海岸がある。だからここから臨む景観は近いものがある。

吉崎海岸は、現在では四日市市内で唯一の砂浜がある海岸で（ただし海水浴場ではない）、ウミガメの産卵地として、また春には貴重な花であるハマヒルガオが咲くという、意外なほど自然豊かな場所だ。

Image may be NSFW.
Clik here to view.

Image may be NSFW.
Clik here to view.

Image may be NSFW.
Clik here to view.

[ゴジラの破壊シーンから場所の特定にチャレンジ in 鈴鹿]

続いて鈴鹿サーキットのシーンはどうか？

これはメインスタンドから左手の方を見遣るアングルに思える。

私は、本当にたまたまだがスーパーGTを観戦しに行ったとき（Ep.106参照）に撮った写真の構図が劇中の構図にそっくりだったため驚いた。

このように第20作「ゴジラvsメカゴジラ」では、劇中のシーンから実在の場所とアングルを探し当てるという楽しみを見出すことができた。

＜その他の作品では？＞

その他、第18作「ゴジラvsキングギドラ」(1991年)でも四日市が出てくるとする情報も見られる。

実際に私が同作を鑑賞したところ、宇宙怪獣キングギドラの飛行で49分に原爆ドーム上空を通過。瀬戸大橋を破壊。

そして53分に工場を破壊しているシーンがあったがここが四日市なのだろうか？

もしかしたら同作の設定ではそうなのかもしれない。ただ劇中で「四日市」とは一度も明言されておらず、したがって私は同作を「三重県が登場する作品」としてカウントしなかった。

＜記念すべき初回作のロケ地は三重県＞

「やっぱりゴジラのせいかのう…」

島の長老がつぶやくそのシーンこそ、日本映画史上、初めて“ゴジラ”という単語が口にされた歴史的瞬間だった。　

同作21分過ぎには主人公はじめ人々の前に初めて姿を現したゴジラ。「ジュラ紀の生物だ」と。

初回作「ゴジラ」における「大戸島」が初登場シーンであるが、このロケ地は志摩市石鏡（いしがみ）町。実際の住民がエキストラとして出演しているとのこだ。

そう、劇中で「三重県」の設定ではないものの、本県はゴジラ史における重要地なのである。

以上、まとめると歴代のゴジラ映画においてゴジラは過去に2度、三重県に現れていた。

一度目は第4作「モスラ対ゴジラ」(1964年)にて、四日市に。

二度目は第20作「ゴジラvsメカゴジラ」(1993年)にて、四日市と鈴鹿に。

先日（24年11月）も新作の制作決定がアナウンスされ、ますます意気揚々の同シリーズ（第31作となる作品）。

ゴジラ、三重県に現る。

その日が再び来るのを楽しみにしている。

----------------------------------------

Godzilla, who appeared in Mie

Ep.237

Godzilla, this Japanese movie star, who appeared in Mie twice.

In 1964, “Yokkaichi chemical plants area” (as “Mothra vs. Godzilla”).

In 1993, Yokkaichi and Suzuka Circuit Park (as “Godzilla vs. Mechagodzilla II”).

I tried following his detailed trail in this episode.

https://godzilla.store/shop/default.aspx

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%82%B9%E3%83%A9%E5%AF%BE%E3%82%B4%E3%82%B8%E3%83%A9

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%82%B8%E3%83%A9vs%E3%83%A1%E3%82%AB%E3%82%B4%E3%82%B8%E3%83%A9

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%82%B8%E3%83%A9_(1954%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%98%A0%E7%94%BB)