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Channel: みんなの笑顔が三重(みえ)てくる Jima-t’s diary
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ラグビー 三重ホンダヒート vs 東芝ブレイブルーパス東京 編

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Ep.201

2010年12月、大学院生だった私はハワイで行われた国際学会から帰路につくため旧ホノルル国際空港にいた。

 

海外の空港に慣れていなかったために帰国便の航空会社の搭乗手続き窓口がどこか分からず、研究室の同期とともに2人でそれらしい雰囲気のある列に並んで待っていた。それは長蛇の列だった。

 

Daniel K. Inouye International Airport Business Insider Indiaより

 

列の最後尾に並んだ私たちの前には、非常に身体の大きな女性たちが4人ほどで談笑していた。

彼女たちはみな180cm、100kgくらいありそうだ。

ようするに、超肥満体型の人たちだった。

 

するとその中の一人が私たちに向かって何か話しかけてきたが、不幸なことに当時の私は彼女の英語がまったく聞き取れなかった。

通じないと分かった彼女はあきらめ、また談笑に戻った。

 

よく見ると、彼女たちの前で待っている人たちもみな、身体が大きかった。

この列で待ってる人たちは「全員」、異様に身体が大きいことに気付いた。

日本に行く便だと思って並んだはずなのに「見た目が日本人ぽい人」がいないのだ。

 

ようやく変だと気付いた私は、同期を残して列の先頭を確認しに行ってみることにした。

 

果たしてその結果、行き先は

Pago Pagoパゴパゴ

とあった。

 

そこが世界のどこなのかは分からない(当時はスマホを持っていなかった)。

ただ、この行列は成田に行く便ではなかったのは確かだった。

 

それにしてもなんてマヌケな話だろう?

何を思ってそこが成田に行く航空便の列と判断したか、今となっては分からない。

私と同期は列を離れた。

 

列を離れるとき、あらためて並んでいる人たちを観察した。

男性、女性、みな本当に身体が大きい。正真正銘のキング&クイーンサイズである。

 

イメージ JAL HPより

 

日本に着いた後、インターネットで調べて分かったことがある。

Pago Pagoについてだ。

 

日本の人、1000人に尋ねても、1人くらいしか知らないのではないだろうか?

私もそれまでは知らなかった。

 

 

Pago Pagoとは、「アメリカ領サモア」の首都である。

 

そしてアメリカ領サモアとは、ラグビーの強豪である「サモア独立国」の南東にある島のことで、広大な太平洋に散らばるポリネシアの島々の一つだ。

歴史的背景から現在はアメリカ合衆国の一部であるが、構成している人々の民族的なルーツはサモア国と同じ、ポリネシアとのことだった。

 

Pago Pagoとホノルルは4,100km離れている

広大なポリネシアの島々の一つ

Pago Pagoとサモア独立国は160km離れている

 

だからホノルル空港で並んでいた彼ら/彼女らはポリネシアンだったのだ。

縦(身長)に大きいだけでなく、横(幅)に異常に広いというあの体型は、まさに彼ら/彼女らに特異的なものである。

 

あのとき、私に話しかけてきてくれた女性は、

これ、Pago Pagoに行く飛行機だけど、あんたたちも本当にPago Pagoに行くの?

というようなことを言ってくれたに違いない。

 

イメージ Pago Pagoの女性たち National Park Service HPより

Pago Pago ホテルズコンバインドHPより

 

ここまでの記述をよくイメージできない方がいたら以下を考えてみてほしい。

あなたが長蛇の列の最後尾にいて、あなたの前に並んでいるのが、

小錦

武蔵丸

マーク・ハント

ディビッド・トゥア

ルアタンギ・侍・バツベイ

バレリー・ビリ

であったときのことを。

 

小錦(元大相撲力士。外国出身力士初の大関。ハワイ出身。両親はサモア系。187cm、280kg) 時事通信より

曙(元大相撲力士。外国出身力士初の横綱。幕内優勝11回。ハワイ出身。204cm、230kg) 日本経済新聞より

武蔵丸(元大相撲力士。外国出身力士初の横綱。幕内優勝12回。ハワイ出身。アメリカ領サモア生まれ。192cm、230kg) 時事通信より

マーク・ハント(元総合格闘家ニュージーランド出身。サモア系。178cm、120kg。2022年にはオールブラックスソニー・ビル・ウィリアムス(Ep.195参照)とボクシングで対戦した) MMAPLANETより

ディビッド・トゥア(元プロボクサー。サモア出身。178cm、110kg。2000年にレノックス・ルイスと世界戦を行い判定負け) gettyimagesより

ルアタンギ侍バツベイ(元ラグビー選手。トンガ出身。190cm、120kg) 朝日新聞デジタルより

バレリー・ビリ(史上最高の砲丸投げ選手。五輪4大会出場で金金銀銅メダル獲得。世界選手権4度優勝。ニュージーランド出身。毋親はトンガ出身。193cm、120kg) Photo Sportより

(身長・体重はWikipediaより)

 

アスリートを持ち出すのは大袈裟かもしれないが、あのとき列に並んでいた一般peopleたちもみな規格外の身体のサイズだった。(少なくとも私の心象体験として)

 

きっとあなたも、「自分はなんて身体が小さいことだろう」と思うに違いない。

なぜ、こんなにも身体的特徴が違うのか?」と考えるに違いない。

 

私たち人間の持つ、“圧倒的な多様性”に、当時の私は絶句した。

 

イメージ University College London HPより

 

あの出来事から14年。現在の自分にとっては、これは「出アフリカ」「Homo sapiens Migration(現生人類の拡散)」という人類史上の大イベントとの関わりで説明することができるし腹落ちもしている。(Ep.56131参照)

すなわち、人類は自らの居住する地域の気候や環境に適応して、身体的特徴や形質を獲得していった、というものだ。

 

例えば赤道近くに居住する集団の肌の色が褐色なのは、強烈な太陽光線(紫外線)により皮膚ガン等になるリスクを低減するため、メラニン色素が活発に生成されるようになったためと解釈される。

 

ではサモア人をはじめとしたポリネシア系の人々のあの“肥満”体型とは?

 

広大な太平洋に島々が点在するポリネシアは「リモートオセアニア」と呼ばれ、ホモサピエンスの拡散の旅においては南米大陸の南端と並んで終着点とされる。

 

最初期にこの地に入った人たちは、隣の島に“所用”があって行くにも長期間手漕ぎ舟で航海する必要があったことだろう。その場合持って行く(舟に積み込める)食料の量も限られた。

そもそも土地(島)の面積は小さく、得られる食料も限られている。

 

すなわちサモア人(ポリネシアン)が極度に肥満なのは、食料の大量入手が叶わない環境下、エネルギーを効率よく蓄え、活動する(脂肪をエネルギー源とする)のに適しているため、と解釈される。

 

これによりもたらされた彼らの身体は、現代において格闘技やラグビーなどのパワー系のスポーツで利点を獲得することとなった。

 

ルアタンギ侍バツベイ AFPBB Newsより

 

前振りが長かったが話をラグビーに持っていこう。

日本のラグビー界に縁のあるサモアやトンガ出身の選手は数えきれないが、先述のルアタンギ侍バツベイこそ私が最も好きな選手だった。

東芝近鉄Ep.98参照)、豊田自動織機に所属し、日本代表として2007年W杯に出場。

190cm、120kg。典型的なPR(プロップ )の体型でありながらポジションはなんとNo.8。機動力や運動性能を買われてこのスターポジションで起用されていた。

 

朝日新聞デジタルより

 

06-07シーズンのトップリーグ決勝サントリー戦。

当時、既に“アンチサントリー”(アンチ清宮監督)になっていた(Ep.189参照)私は、試合最終盤、逆転を狙ってゴール前でアタックする東芝をTVの前で興奮して応援していた。

 

最後の最後、後半40分を経過。ラスト数mでラックからバツベイがボールをピックアップ。

巨体を前進させ、止めに来た相手FB有賀剛を吹き飛ばし逆転トライ!

あまりに劇的な逆転トライシーンに、当時一人暮らしをしていたアパートで私は歓喜したものだった。バツベイサントリーを地獄に落としたのだった。

彼の規格外のサイズとパワーを示す最も象徴的なシーンだったと言える。

 

私の人生のラグビー観戦史上、こんなにも興奮したラストシーンは、15年W杯の日本vs南アフリカ戦(Ep.89参照)を除けばこの試合だけだ。

 

gettyimagesより

 

2007年W杯ももちろん熱心にバツベイを応援していた。

あれは何戦だったか? 後半途中に逆転勝利のための切り札として出てきたバツベイ

ボールを持って突進する。相手選手を全員蹴散らしてゴールまで走ってくれ、と願い、期待したのは私だけではなかったはずだ。

だが相手ディフェンス数人がかりで止められすぐに倒されてしまった。

テレビ解説の薫田真広さん(東芝の元監督で選手としてのバツベイを誰よりも知る人)が、

バツベイは立ってプレーしなければいけないんですね」

と苦虫を噛み潰したように言っていたのを、なるほどな、と思った。

 

巨体で馬力や推進力に優れる選手に“立った”状態でいられると厄介だ。

味方のサポートを受けてモールで更に前進されるかもしれないしオフロードパスで繋がれるかもしれない。

だから相手からすると“寝転がし”てしまえば勝ちだ。そうしたらそれ以上前進はされないのだから。

それは容易なことじゃない。なにしろ「PR体型のNo.8」に対しては。

しかしそれをされてしまうところに、相手の、世界の強さを感じた。

 

ジャパンはその試合に勝利できなかった。世界の舞台で勝利するのに、まだ機は熟していなかったのだ。

当時の日本のラグビーシーンでは最強だったバツベイの攻撃力も、世界では封じられた。

バツベイのファンとして実に悔しかった。

 

NHKより

 

東芝バツベイの活躍もあり黄金時代を築いた(現在の東芝ブレイブルーパス東京)。

その後時代は三洋電機(現パナソニックワイルドナイツ)に移り、そのまま現在に至るのが日本のラグビーシーンと言ってよい。(その意味でパナソニックの黄金時代はもう10年近い。異常である)

 

東芝はというとやや低迷し、一時は中位をうかがうチームになり下がった。

 

が、近年は復調気配だ。

特に今シーズンは開幕から11勝1敗1分の現在2位。すでにプレーオフ進出も決めた。唯一の黒星がパナソニックということを考えると、あの頃の、王者の時代の強さが完全に戻ってきたと言える。

 

その今シーズンの東芝を強力に牽引しているのが、

SOリッチー・モウンガとFLシャノン・フリゼルオールブラックスコンビである。

 

リッチー・モウンガ(中央)、シャノン・フリゼル(右) 東芝ブレイブルーパス東京 HPより

 

 

リッチー・“ウィザード”・モウンガ

リッチー・モウンガ Richie Mo'unga Rugby Republic より

 

王国のアタックを司る“魔法使い”、SOリッチー・モウンガ。

ワールドラグビーの歴史ではもはや“キング”・カーロス・スペンサー、クウェイド・クーパー(Ep.98参照)と並ぶ存在になったと言える。

変幻自在なパス、一瞬の隙をつくキレのあるラン。

2019、2023W杯の2大会連続でオールブラックスのファーストチョイスSOとなった功績は偉大である。

今シーズン、東芝にやってきて開幕からレベルの違いをまざまざと見せつけている。

 

 

シャノン・“ボンバー”・フリゼル

シャノン・フリゼル Shannon Frizell Rugbypassより

 

FLシャノン・フリゼルオールブラックスではブラインドサイドフランカー(6番)。

大型で、高性能の機動力を有し、敵陣に突っ込んで蹴散らす。その姿は“爆撃機”のようだ。

オールブラックスの偉大な先輩であるFLジェローム・カイノを超える日も来るか?

東芝でもこのポジションの選手としては珍しくハットトリック(1試合で3トライ以上すること)をシーズン序盤にしていた。

 

三重ホンダヒート HPより

 

第14節、三重ホンダヒートvs東芝ブレイブルーパス東京@鈴鹿

ヒートは現在2位のこの強豪相手に2勝目なるか。

ついにFLパブロ・マテーラ選手(Ep.183参照)が復帰。今シーズン初出場である。

 

対する東芝は、なんと前述のリッチー・モウンガとシャノン・フリゼルがともに登録外。この試合には出場しない。それどころかあまり出場機会がない選手たちがスタメンに名を連ね、1.5軍の様相である。

ヒートも舐められたものだ。

 

ヒート HPより

 

私はこの試合も現地での試合観戦には予定が合わず、自宅でJ-Sportsでの観戦となった。

 

キックオフ直後、いきなりマテーラ選手がジャッカルに成功。

ヨシ! と心の中で叫ぶ。最高だ。キミの復帰を待っていたんだよ。

 

FLパブロ・マテーラ選手 ヒート HPより

 

予想に反し序盤から互角の戦いが繰り広げられる。

ヒートは良いディフェンスを見せる。マテーラの存在が大きいのか。LOフランコ・モスタート選手もいつもより溌剌とプレーしている。

そしてFBトム・バンクス選手の爆発的な加速力。相手WTBジョネ・ナイカブラ(23年W杯日本代表)を振り切りそうな場面を含み、キレキレである。印象的なランを何度も披露。正直、私はこれまでワラビーズ通算20キャップのこの選手の実力に首をかしげてきた。しかしここで凄みを発揮してきた。

 

マテーラ選手のハッスルに、同じカテゴリーC(他国の代表経験者)の選手2人が呼応したのだろうか。

 

FBトム・バンクス選手 ヒート HPより

 

現在リーグ2位の東芝はメンバーの実力が落ちるためかミスが多発。FW戦でも圧倒できない。

なんと0-0で前半終了。これぞ“一進一退”とも言えるもの。

私はメンバーを落として挑んできた東芝に対して「ざまあみろ」と思っていた。

とともにヒートに対して「これは勝てるぞ」とも。

 

ヒート HPより

 

後半2分。先制はなんとヒート。WTB渡部寛太選手がこぼれ球を取得するやや幸運な形でトライ! 大いに盛り上がる。ヒート、7-0とする。

 

ヒート HPより

 

その後も緊張感のある展開が続く。

ヒートの金星がちらつき始めた後半32分。東芝ラインアウトモールからトライを許す。コンバージョンゴールは許さず。7-5。

 

しかしその直後、36分にペナルティを献上。決められて7-8と逆転を許す。

そしてそのままスコアが動くことなく試合終了。最小得点差で力尽きた。

 

惜しい..

これは勝てる試合だった。いや、勝つべきだった。ファンも脱力だ..

あと10分間。ヒートとしてももちろん“逃げ切る”マインドではなかったろうが、結果としてあと10分間を耐えることができなかった。

攻撃力が不足し、追加点を奪えなかったのもまた事実である。

 

ヒート HPより

 

光明を見出すとすればやはりマテーラ選手。彼のブレイクダウンでの仕事は抜群だった。本試合は前半終了とともに交代。今後も徐々に出場時間を増やしていくのだろう。惜しむらくはこのシーズン終盤に来ての復帰だが昨秋のW杯で大怪我を負ったのでこれは分かりきっていたこと。

 

メンバーを落とした東芝にも勝ちきれなかった。

それは重い事実だ。

 

すでにDivision2のチームとの入れ替え戦に挑むことは決定している。

レギュラーシーズンは残り2戦。今日の試合のように格上相手でも勝利のチャンスがあることは示した。善戦ではなくて勝利が欲しい。

 

ヒート HPより

 

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Rugby Mie Honda HEAT vs TOSHIBA Brave Lupus Tokyo

Ep.201

Match Week 14 of Japan Rugby League ONE in 23-24 season, Mie Honda HEAT fought against TOSHIBA Brave Lupus Tokyo.

HEAT challenged this prestigious team who had been provisional 2nd place.

 

It was evenly matched due to Brave Lupus did NOT choose generally 1st choice member.

Though, HEAT could NOT reach more 1point and as a result 7-8 loss.

 

www.honda-heat.jp

www.bravelupus.com

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